急速載荷試験は、杭頭部に動的な載荷を行って、杭の支持力特性を把握する試験です。載荷時間は0.05~0.2秒であり、衝撃載荷試験の約10倍です。この載荷スピードでは、載荷中に杭は全長に亘って圧縮状態となるため、杭体を伝わる縦波による波動現象を無視することができます。このため実験結果から比較的簡単な方法で、杭の荷重-変位関係を推定することが可能です。
杭の鉛直押込み支持力を評価する載荷試験法は、地盤工学会基準で表-1に示す4つの方法が規定されています。 急速載荷試験とは、地盤工学会基準JGS1815-2002として2002年に制定され、建築・土木全般で行われており、動的な荷重を杭頭に載荷する試験の一種です。油圧ハンマーで杭を打撃するような衝撃荷重ではなく、ある程度ゆっくり荷重を与えることが必要です。これにより、杭の静的抵抗と動的抵抗を比較的簡単に分離でき、静的載荷とほぼ同等な結果を得ることが出来ます。全ての杭種、工法の杭に適応します。
弊社では軟クッション重錘落下方式急速載荷を採用しFM急速載荷試験(Falling Mass Rapid Load Test)と称します。この方式は重錘を落下することにより杭頭部に押込み力を与える方法で、クッション材を介して杭頭部を打撃することにより長い載荷時間を実現しています。試験の特徴として、試験装置が静的載荷試験と比較して簡便であり載荷に要する反力体が不要なこと、試験時間が短いこと等があげられます。荷重の管理は、重錘の質量と落下高さにより行います。試験を計画する場合、まず載荷する最大荷重を決め、その荷重から重錘の質量を選定します。重錘落下方式の急速載荷試験は、落下高さを段階的に増加して載荷荷重を増やしていけば多サイクルの試験が可能です。1打撃に所要する時間は約5分以内のため、10打撃の載荷を行っても1時間以内で試験は終了します。図-1に8サイクルで実施した急速載荷試験の荷重-変位量関係図を示します。
FM急速載荷試験は、載荷する荷重の大きさと杭長により使用する重錘の質量が変わります。
弊社では300~5,600Kgまでの重錘を用意しており、載荷荷重に対応した載荷装置を選ぶことができます。 表-2に示した重錘質量と載荷荷重の表を目安として、使用する載荷装置を選定します。
重錘重量 W (ton) |
対象杭径 φ (mm) |
最大落下高さ hmax (m) |
最大荷重 Frapid (kN) |
除荷点荷重 Rulp (kN) |
---|---|---|---|---|
0.3 | 100~300 | 1.4 | 196 | 147 |
0.6 | 100~300 | 3 | 841 | 631 |
1.2 | 300~700 | 3 | 1117 | 838 |
2 | 300~700 | 3 | 1862 | 1396 |
5 | 400~900 | 2.5 | 3724 | 2793 |
15 | 400~900 | 3 | 8804 | 6603 |
25 | 400~900 | 3 | 17608 | 13206 |
30 | 400~900 | 3 | 17608 | 13206 |
40 | 600~1200 | 2.5 | 21429 | 16071 |
56 | 600~1200 | 2.5 | 25840 | 19380 |
急速載荷試験における測定項目は、杭頭部の荷重・変位量・加速度です。変位量測定はオランダIFCO社製のODMシステムを使用しています。このシステムは光学式な変位測定器で、杭の変位量を動的に測定できます。ロードセルで荷重を、加速度計で杭体の慣性力を測定します。
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急速載荷試験とは、動的な急速荷重を載荷する試験です。地盤工学会基準では、その急速載荷試験結果から静的抵抗力をもとめるには除荷点法という解析手法を用いると示されています。急速載荷とは、載荷速度に依存する動的抵抗成分(速度が大きいほど動的抵抗成分は増加する)と静的抵抗成分が合わさったものと考えられています。
除荷点法とは、杭の最大沈下時Smaxのときの荷重を静的抵抗力とするものであり、その荷重を除荷点抵抗力Rulpと称しています。すなわち、杭の変位量が最大となった時とは杭の変位が下向きから上向きに変化した時であり、その時には杭は静止した状態です。したがって動的な抵抗力は加わっていない(速度υ=0)と考え、静的荷重とみなす理論です。最大荷重(ピーク荷重)と除荷点抵抗力Rulp(静的抵抗力)との比率は、地盤工学会 急速載荷試験法研究会の資料によると最大で30%増し程度です。 杭長の長い杭の場合など、波動現象の影響を受けると考えられる急速載荷試験は、一次元波動解析法による波形マッチング等の詳細解析にてより精度の高い支持力判定を行うことが出来ます。