杭の載荷試験

杭の載荷試験は、杭の特性の調査、設計定数の確認等を目的として行われるもので、以下のような種類があります。

表1 載荷試験の分類
載荷方向 静的・動的 試験名称 地盤工学会基準
鉛直載荷試験 静的載荷 押込み試験 JGS 1811-2002
先端載荷試験 JGS 1812-2002
引抜き試験 JGS 1813-2002
鉛直交番載荷試験 JGS 1814-2002
動的載荷 急速載荷試験 JGS 1815-2002
衝撃載荷試験 JGS 1816-2002
水平載荷試験 静的載荷 一方向、正負交番 JSF 1831-2010

押込み試験と先端載荷試験

押込み試験 先端載荷試験

静的載荷試験には、従来から一般的に行われている「押込み試験」と、「先端載荷試験」があります。

押込み試験は、建物荷重と同じ様に杭頭から荷重をかけることができるため、ダイレクトに杭の荷重-変位関係や極限支持力を求めることができます。 したがって最も信頼性が高いものです。 ただし大口径の杭では、大規模な反力梁が必要となりますが、システム計測では、 日本最大の60MNまで載荷が可能な反力装置を用意しています。

先端載荷試験は、あらかじめ杭先端にジャッキを埋設して、杭先端に荷重をかける試験です。杭の摩擦抵抗と先端抵抗とをお互いに反力として、載荷するものです。大規模な反力梁を必要とせずに、杭先端に大きな力をかけることができるため、比較的低コストな実験を行うことができます。杭の荷重-変位関係をダイレクトに求めることはできませんが、 実験結果をもとにした解析(荷重伝達法等)を行うことで、精度の良い推定が可能です。

段階載荷方式と連続載荷方式

地盤工学会の載荷試験基準では、静的載荷試験(押込み試験、先端載荷試験、引抜き試験)の荷重載荷方式に、「段階載荷方式」と「連続載荷方式」が採用されています。

すでに両方式の比較検討もなされ、地盤のクリープ現象が無視できるような場合には、時間短縮が可能な「連続載荷方式」の適用が可能であることが報告されています。連続載荷方式は、地震時の杭の剛性評価に重要な試験となります。

多段階載荷方式 連側載荷方式

地盤工学会の載荷試験基準では、試験時間の短縮を図り、多段階載荷試験の荷重サイクルにおいて、1サイクル載荷試験も可能となりました。段階載荷試験の載荷方法は表2のとおりです。


表2 段階載荷試験方式の載荷方法
荷重段階数 8段階以上
サイクル数 1サイクルまたは4サイクル以上
載荷速度
(kN/min)
増荷重時:(計画最大荷重/荷重段階数)/min
各荷重段階における荷重保持時間 新規荷重時 30分以上の一定時間
履歴内の荷重段階 2分以上の一定時間
0荷重段階 15分以上の一定時間


急速載荷試験と衝撃載荷試験

急速載荷試験 衝撃載荷試験

急速載荷試験や衝撃載荷試験は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験で、大規模な反力装置を必要としません。反力を取ることが難しい海上杭の支持力確認や、高精度を必要としない既設杭の支持力確認、多数本杭の品質管理などに威力を発揮します。
急速載荷試験の中で現在多くの実績がある方法の一つとして、柔らかいクッションを用いて,重錘の落下の打撃力を急速荷重に変換し載荷する軟クッション重錘落下方式があります。載荷時間が比較的遅いため(0.1~0.2秒程度)、載荷中杭は全圧縮の状態にあり、杭の静的な荷重-変位関係についてもある程度評価することができます。さらに地震時挙動の把握を目的とした調査には適切です。
新設杭の他、反力の取りにくい海上杭には適応性が高く、既設杭の再利用を目的とした支持力確認のために実施された例もあります。
衝撃載荷試験は、ハンマーやモンケンによる杭打撃時に発生するひずみ波形や加速度波形を解析し、杭の緩急抵抗を求める試験法です。最も低コストな載荷方法です。直接杭の荷重-変位関係や支持力を求めることは不可能ですが、波動理論などの若干複雑な解析を用いて評価します。約30年前にアメリカで実用化され、国内では約10年ほど前から東京湾横断道路等で特に鋼管杭を対象に実施例が増えています。多数本の杭の品質管理に用いることも適切です。
各載荷試験の特徴は、表3のとおりです.目的およびコストに合った試験方法を採用します。

表3 各載荷試験の特徴
押込み試験 先端載荷試験 急速載荷試験 衝撃載荷試験
載荷方式 載荷荷重 静的 動的
載荷時間 数分~数時間 0.1~0.2秒 0.01~0.02秒
加力装置 油圧ジャッキ 軟クッションハンマー,燃焼ガス圧
反力装置 載荷梁、
反力杭など
原則不要 不要 不要
静的支持力の評価 解析 結果を直接利用 荷重伝達法等 一質点系モデル、一次元波動論、FEM等 一次元波動論
精度 高い 中間 低い
コスト 高い 中間 低い